大学生なら卒論を(2018年度 その2)

卒業研究発表会報告の続きです。最初の5件の発表を終え、発表を終えてほっとした表情の学生と、次第に迫る自分の順番を緊張して迎える学生の違いが見られるようになってきます。こういうものは早く終る方がいいですよね。私も、できるだけ早い出番で発表を終えたいタイプです。

長田拓也(渡邊ルゼミ)「漫画『ばらかもん』を読む〜『島』での出会いと成長〜」

漫画「ばらかもん」における島での出来事が主人公へ与えた影響についての考察です。考え方を変えた言葉として、「どうぞお先に」に着目しています。人工物にあふれた世界ではない環境の中で、一位しか認めないという考え方が変わり、書道も変わっていったと分析しています。
漫画の登場人物の言葉が読者に与える影響は大きいですね。ブログの著者も、かなり影響を受けているという自覚はあります。主人公に与える影響がそのまま同じように読者に影響を与える言葉となるのかなど、気になります。

     
加藤健太(渡邉由ゼミ)「男性保育士の現状と課題ーいかに働き甲斐があるのかー」

保護者に十分に受け入れられていない男性保育士のやりがいについて、男性保育士2名の聞き取り調査をもとに考察した研究でした。約2時間のインタビューを実施しています。保護者との距離を近づけていくために、子どもの様子を話すことの大事さを意識していることなどが判明したようです。保護者との信頼関係が働きがいになっているのは明らかでしょう。会場からは、経験年数がやりがいにつながる面があるのではないかという指摘がありました。男性ならではの課題をはっきりさせて後輩に伝えて欲しいという要望もありました。
こども学科は、男女比が1:1くらいですが、実際に保育所に就職すれば、男性の割合が低い職場で頑張らなければいけません。男性保育士が保護者との信頼関係を深めていくためのやり方を掴んで欲しいと思います。

    

河南仁(潮谷ゼミ)「高齢者とレクリエーションについて」

高齢者施設でのレクリエーションの思想、方法、課題についての研究です。レクリエーションが、こどもっぽい、つまらないといった指摘があり、どのようなレクリエーションがよいのかを考えることは重要です。高齢者レクリエーションの目的は、身体機能の維持、認知症予防、コミュニケーションの活発化、生きがいの創出等様々です。平均寿命と健康寿命の差は男性9年、女性12年ですが、これを少なくしていくことにも繋がります。要支援・要介護状態にならないためのレクリエーション、団塊の世代にあったレクリエーション、高齢者だけでなく障がい者も合わせた分野横断的支援に合わせたレクリエーションが、課題解決のキーワードだと結論づけています。
会場からは、具体的にはどのようなレクリエーションがよいのか、良い事例はないのか、ゲートボールなどはどうなのかといった質問がありました。コミュニケーションが活発化するように、協調性のあるもの、協力してやるものがよく、ゲートボールなどはよい例だと回答していました。

   
桑木敦史(渡邊ルゼミ・矢島指導)「テキストマイニングによる形式別司会者能力の可視化」

テキストマイニングを用いた研究には様々なものがあり、話した内容の分析からテーマを抽出したり、子どもの話し合いが成長と共にどのように変わっていくかなどの研究もあります。この研究では、テキストマイニングと対応分析によって、話し合いの発言者と用語をマップ上に配置することで、司会者の能力を可視化できないかということに注目して分析しています。まだまだ課題は多いですが、司会者の能力を、公平性、統制力、展開力から分析できることを示していました。会場からは、言葉にあらわれていない内面についてどのように考えているかという質問がありました。言葉として記録されているものだけでは、司会者の能力の分析としては不十分かもしれませんが、今回はそれには触れないでやっているという回答でした。
私自身が関わった卒業研究ですので、いろいろ書きたいことはありますが、ひとつだけ記すならば、発表者自身がこちらの与えた論点について常に深く考えてきたことが、面白い結論になったということです。

     
西古真実(潮谷ゼミ)「若年出産の問題について」

若年出産の問題点や支援体制についてまとめています。今後の対応として、性教育の在り方、妊娠・出産・育児の環境改善、妊娠出産育児の情報提供、妊産婦の不満と不安への対応、親になるための移行期に必要な技能の習得を挙げています。
同じ仲間に対して教育をするピア・エデュケーターの活動も重要としています。
ピア・エデュケーターを軸とした横断的なテーマの研究というのも面白そうだと感じた研究でした。

今回はここまでです。

大学生なら卒論を(2018年度 その1)

卒業式まで、あと9日となりました。5回シリーズで、こども学科の卒業研究発表会の報告をします。卒論は学生生活の集大成です。こども学科の学生が何を学んできたのかをお伝えします。

青松昂希(高岡ゼミ)「ゲーム依存と引きこもりとの関係について〜大学生の調査から〜」

ゲーム依存の引きこもりの関係を大学生の調査から調べた研究です。引きこもりの人たちは何をしているのだろうかという疑問をもち、スマートフォンの存在が引きこもりの要因ではないかということについて考察しています。
ゲーム依存は、2018年にWHOで疾病分類に取り上げられ、定義もされています。それを参考に62名のアンケート調査を実施しています。しかしながら、62名のアンケート調査では結論づけるのは困難ですが、ひきこもりとゲーム依存の相関関係や有意差はないという結果だったそうです。いかにも関係がありそうなものに、関係がなかったというのは興味深い結果です。

飯川拓実(渡邊ルゼミ)「キャラクターショーにおける『ヒーローの在り方』」

学生自身の経験に基づいた、キャラクターショーにおける工夫や配慮についての分析です。こどもたちには本物として写っていること、テレビでしか見られない憧れが目の前にあることを意識してやらなければならないそうです。声は役者の声に近い人を選んだり、シークレットブーツ、詰め物などで体を見栄えをよくするなどの工夫があるそうです。一方で、素面をさらしてしまったり、面間違いなどは決してしていけないミスということです。ヒーロー番組は、子どもたちに、友達と共通の話題を与え、正義感や仲間意識が芽生えるというメリットがある一方で、玩具の単価が高く家庭に負担を与えるというデメリットがあることも指摘していました。会場からは、大人の層の人気についての質問があり、2007年の仮面ライダー電王が、大人の層の人気上昇のきっかけとなっており、大人であってもヒーローとして対応する重要さを説いていました。
テレビの画面でみることと、キャラクターショーでみることの本質的な違いは何かと考えさせられる発表でした。「テレビでしか見られない憧れが目の前にある」ことも感動的ですが、「ショーで見たもの(会ったことがあるもの)がテレビに出ている」驚きもあると思います。ショーとテレビの順番の違いが子どもに与える影響なども気になります。

池下晃司(潮谷ゼミ)「知的障がい児の教育現場における生活支援について」

特別支援学校による児童発達支援の位置づけから、「自立活動の6つの区分」と「合わせた指導」に着目し、今後の方向性について論じています。教職員の専門性の向上を目指すことが大事であり、特別支援学校教諭免許状の取得率を上げること、障がいのある者の教職員の配置、指導主事に対する効果的な研修の3つの方向性を示していました。「自立活動の指導」では、中軽度の知的障がい児の教科教育とのバランスがとれていないことを問題点として挙げています。
会場からは、知的障がい者への具体的な働きかけについて質問があり、生活場面を念頭においた指導をすべきだと、回答していました。

泉屋香奈(潮谷ゼミ)「障がい者支援施設における職員困難」

職員の困難について、どのような問題点があるのかを述べています。バーンアウト症候群をかかえて離職する人が増えているという事実があるようです。一方で、利用者に対する職員の虐待などもあるということで、難しい問題です。今後の改善のためには、プリセプター制度や給与の改善が有効だとまとめています。
会場からは、実習の経験が研究を進めるにあたってどう反映されているかという質問がありました。利用者は職員を家族と思っているので、気持ちをよりくんであげることが大事だということを分かった上で、研究を進めたそうです。
実習が職業経験だけにとどまらず、卒業研究に取り組む際の思想につながっているのはよいことですね。

奥田祐大(潮谷ゼミ)「バリアフリー新法の現状と課題」

バリアフリーとは、歴史的には1974年に国連がバリアフリーデザインを発表したのがきっかけだったそうです。その後、ハートビル法、交通バリアフリー法が統合したバリアフリー新法が2006年に制定されています。この新法には、施策の拡大・充実を実現、地域連携の強化・促進、ハード面・ソフト面の強化促進という3つの見直しの方向性があり、2018年に改正されたそうです。それでもまだ課題はあるということで、バリアフリー法の施策不足を挙げていました。施策会議を開催しても決議されず予定で終わってしまうそうです。健常者と障がい者の溝がまだ深いのでなんとかしたいという想いも発表していました。

 

2019年度に向けて

3月になると、多くの学生の実習期間も終わり、学生の姿は少なくなります。人が少ない時期だからこそできることもありまして、パソコン室のPCの更新や、部屋の空調の工事など、次年度の学習環境を着々と整えているところです。そして、4月から入学する新入生を迎えての入学前セミナーが、各学科で行われるのもこの時期です。3月4日〜6日の3日間、こども学科では11人の教員によるリレー講義・演習が行われました。参加者は、入学前から学科のほぼ全教員を見ることができ、多くの先生から、メッセージをもらうことになります。

教室での講義「大学でこども学を学ぶ―子どもと生きる大人になるために―」(渡邉由之先生)とグループ活動「異文化コミュニケーション ―英語のトラストゲーム―」(杉本孝美先生)の写真です。

そして、卒業式の日も迫ってきました。明日から卒業式の日までは、4年次学生を送り出すシリーズとして、卒業研究紹介をしていこうと思います。

東大阪市民文化芸術祭

東大阪市民文化芸術祭を訪ねた先生からこども学科学生が活躍する姿の報告がありましたので、紹介します。
 3月1日(金)~3日(日)の3日間、東大阪アリーナで開催されている東大阪市市民文化芸術祭に、こども学科2回生が造形作品を展示しています。
 授業「こどもと造形Ⅱ」では、松村和代先生御指導のもと、学生それぞれが創意工夫をこらして、「球体オブジェ」「紙版画」「線表現」による作品を仕上げました。繊細な色と線の交錯を楽しめる作品です。
 また、本日2日(土)午後15時10分頃から、舞台で本学ダンス部Sepi-ahの大学・短大学生がダンスを披露しました。
 学生たちは、授業・クラブを通して地域社会との交流を深めています。

授業期間終了

大学の授業期間が終わり、4年次の卒業研究発表会も終わりました。卒業研究発表会については、後日少し詳しく紹介したいと思います。

今回は、授業に関することで、紹介し忘れていたことを紹介します。

12月19日の1年次実習基礎セミナー科目では、生活支援体験をテーマとした授業が行われました。2年次、3年次では、保育現場での実習だけでなく、児童福祉施設や社会福祉施設での実習もあります。保育だけではなく、生活そのものを支援できるようになることが必要です。多くの学生は、保護者の方と一緒に住んでおり、自分ひとりで身の回りのことを全てやっている学生は非常に少ないでしょう。

年齢を重ねるにつれて、自然にできるようになることを、学生のうちにできるようになっておく必要があり、1年次の時点で、自分ができないことが何かをしっかりと認識しなければいけません。

掃除、アイロンがけ、車椅子の補助、赤ちゃんの扱い、挨拶、お箸の使い方など、教員や他の学生の前で実際にやってみることで、自分が人任せにしていたことや、間違えたやり方をしていたことが明らかになります。施設実習までは1年あります。日々の生活の中で、身につけていきましょう。

アイロンがけや、掃除の基本を知っておくことは大事なことです。

車椅子の扱いも知っておく必要があります。

人形を使って、赤ちゃんのお世話の練習です。

お箸の使い方も、小さな子の見本となるように、変な癖を直します。

大入り

昨日このブログで紹介した園児を招待してのコンサートの本番ですが、私は見に行くことができませんでした。届いた写真だけ紹介しますので、御覧ください。

園児たちとの距離が近づいていく様子が写真から分かりますね。

園児たちへのプレゼント

12月に丹山ゼミのコンサートをブログで紹介しました。その素晴らしい音が、明日24日(木)2時限に832教室で再び響き渡ります。ただし、一般公開ではなく、附属幼稚園の園児たちを招待してのコンサートです。園児たちが楽しめるように、準備を進めています。

演奏会場と普段の練習場所は違う建物ですから、まずは楽器の移動です。

かなり大変な作業ですが、12月のコンサートを経験していることもあり、手際よく進められています。

大教室の前方のスペースに楽器を並べます。園児たちが楽器を近くでみることができるように、配置を工夫しています。

大教室ですので、この写真の撮影位置は教室の中央くらいです。明日は、教室内が園児で満員になり、2回講演となるそうです。リハーサル風景の写真をお届けします。

あと4時間

2019年最初の投稿です。本年もよろしくお願いします。

1月もあっという間に半分が終わってしまいました。これをあと23回繰り返すと2019年が終わります。早いですね。この半月でやったことの24倍しか1年で出来ないのかと思うと、少し悲しくなります。1月後半から巻き返していかなければなりません。

さて、本日はこども学科4年次生の卒業論文提出締切日です。17:00締切ですから、あと4時間ほどですね。まだ提出していない学生が、今頃間に合わせようと必死にやっているはずです。この4時間の頑張りを、1週間、1月、1年と継続できたら、きっとすごいことができますよ。

自分の最高速度を把握し、その持続時間を増やすようになってくれたらと思います。

 

 

コンサートに行ってきました

12月20日は、こども学科丹山ゼミの卒業研究発表・セミナー研究発表「パーカッションアンサンブルコンサート」本番です。行ってきましたよ。日中は雨が降り、準備は大変だったのではないかと思います。

ライティホールの入口で学生が受付です。本番直前にも関わらず、意外と落ち着いているのは、昨年の経験がある4年次生だからでしょうか。

コンサートは3年次のセミナー発表会から始まり、4年次の卒業研究発表会に続きます。まず、4年次は客席で待機です。こちらも余裕があります。

開演時間になり、3年次からスタートしました。手拍子で表現する「Comic Relief」、ハンドベルが主役の「きよしこの夜」と続きます。保育士・幼稚園教諭を目指す学生には、とても大事な経験ですね。緊張感が伝わってきました。2曲終えて、「ウインターワンダーランド」を演奏するころには、その緊張感が、よい方向に変わってきたように思います。

4曲目のウインターエレクトロニクスは、学生が作曲してパソコンで打ち込んだものです。5分間の曲ですから、かなり時間をかけて作成したのではないでしょうか。最後の5曲目「エルクンバンチェロ」は高校野球の応援でおなじみの曲です。そのため、吹奏楽のイメージがありますが、マリンバもいいですね。

休憩を挟んで、4年次の卒業研究発表会です。最初の曲は「Percussion Prade」3楽章Floccinaucinihilipilification、5楽章Samurai、6楽章See You!です。

さすが4年次、3年次の演奏もよくやっていると思いましが、4年次はやはり1年の違いを感じさせますね。鉄琴の音が印象的な3楽章から、合戦シーンがはまりそうな5楽章、6楽章は太鼓の振動が伝わってきます。空気の動きを感じることができるのが、生演奏のいいところです。

1曲目が終わると、シートがひかれ、その上に棒が置かれました。何が起きるのか期待してしまいます。

2曲目の「Stick Stick」は文字とおり、長短2本のStickと自分の足を使って奏でる曲でした。写真では伝えることができませんが、このStickから生まれる音は、心地よいものです。4人も楽しそうでした。手にしたものを使って音を出してみるというのは、多くの人間に共通の、やってみたいことなのではないかと思います。

3曲目の「常盤の森」は、常盤(永久不変・常緑樹)の意味にあわせた緑の衣装や、鳥のさえずりや羽ばたきの表現が面白いものでした。目を閉じてしまえば、本当に鳥が飛び立つように聞こえます。ただ、目を閉じてしまうと、せっかくの緑の衣装が見えなくなるので、悩みどころでした。

4曲目の「SQUARE DANCE」は、このブログで、本番1週間前の練習風景を紹介した曲です。今ありがちな表現でいうと、舞台映えする演目です。本番も堪能しました。

5曲目の「Leroy Ander Son Medley」は4年次全員による演奏です。

全ての曲を終えて、整列する4年次生です。

素晴らしいコンサートでした。教室とは異なる学生の姿がありました。本番では先生の姿が全く見えないことが、また素晴らしいですね。学生が自分たちの力でプログラムを進行していくことができるまで先生とゼミ学生の間で様々な指導と学びがあったことと想像します。

丹山ゼミの皆様、素敵な時間を提供してくれてありがとうございました。

2年次も頑張っています(その2)

こども学科丹山ゼミの卒業研究発表・セミナー研究発表「パーカッションアンサンブルコンサート」、明日20日が本番です。今も練習の音が聞こえてきます。ライティホールで17:00開場で17:30開演です。こども学科の学生にも見てほしいコンサートです。5時限授業がない人は行きましょう。

前回に引き続き、こども学科2年次生の話です。キャンパスや学科の元気さを測るなら2年次を見ればよいと言われます。1年次は入学したばかりで、やる気にあふれる学生もたくさんいるのが普通です。3年次・4年次は就職や卒業研究という現実が目の前にあり、とにかくやるしかありません。2年次が、ある種の空白期間になってしまう危険性があるのです。ですから、2年次が元気で活動的なら、その学科やキャンパスは大丈夫といえます。

というわけで、2年次科目「キャリアを考える」と「保育表現技術」の紹介です。「キャリアを考える」は、必修科目です。事実・意見をしっかりと区別して、自分の考えをまとめて書くことを学んでいます。この日は、子どもの「インターネット中毒」に関する記事を読み、その記事を正しく引用しながら自分の考え書いていました。前の週にも同じ記事を読んで書いており、先生の指導を受けて、ブラッシュアップしていきます。

渡邉由之先生が、前回授業での提出物を例に、改善点やこの日の授業でのポイントを説明しています。

どのように改善するか、友人とも話をします。

書き直したものを手にして、先生の指導をうけます。この後ろにも学生が並んで順番待ちです。

続いて「保育表現技術」です。この日は、附属幼稚園で人形劇の上演です。手作りの人形を持って、幼稚園に向かいます。園児は部屋で待ち構えていました。

部屋に入る前にご挨拶です。

いそいで舞台設営です。

手遊びで子どもたちを盛り上げます。

上演中です。

上演中の学生の様子です。

手作り人形に興味津々の園児たちです。

2年次の充実ぶりを見ることができた一日でした。