大学生なら卒論を(2018年度 その1)

卒業式まで、あと9日となりました。5回シリーズで、こども学科の卒業研究発表会の報告をします。卒論は学生生活の集大成です。こども学科の学生が何を学んできたのかをお伝えします。

青松昂希(高岡ゼミ)「ゲーム依存と引きこもりとの関係について〜大学生の調査から〜」

ゲーム依存の引きこもりの関係を大学生の調査から調べた研究です。引きこもりの人たちは何をしているのだろうかという疑問をもち、スマートフォンの存在が引きこもりの要因ではないかということについて考察しています。
ゲーム依存は、2018年にWHOで疾病分類に取り上げられ、定義もされています。それを参考に62名のアンケート調査を実施しています。しかしながら、62名のアンケート調査では結論づけるのは困難ですが、ひきこもりとゲーム依存の相関関係や有意差はないという結果だったそうです。いかにも関係がありそうなものに、関係がなかったというのは興味深い結果です。

飯川拓実(渡邊ルゼミ)「キャラクターショーにおける『ヒーローの在り方』」

学生自身の経験に基づいた、キャラクターショーにおける工夫や配慮についての分析です。こどもたちには本物として写っていること、テレビでしか見られない憧れが目の前にあることを意識してやらなければならないそうです。声は役者の声に近い人を選んだり、シークレットブーツ、詰め物などで体を見栄えをよくするなどの工夫があるそうです。一方で、素面をさらしてしまったり、面間違いなどは決してしていけないミスということです。ヒーロー番組は、子どもたちに、友達と共通の話題を与え、正義感や仲間意識が芽生えるというメリットがある一方で、玩具の単価が高く家庭に負担を与えるというデメリットがあることも指摘していました。会場からは、大人の層の人気についての質問があり、2007年の仮面ライダー電王が、大人の層の人気上昇のきっかけとなっており、大人であってもヒーローとして対応する重要さを説いていました。
テレビの画面でみることと、キャラクターショーでみることの本質的な違いは何かと考えさせられる発表でした。「テレビでしか見られない憧れが目の前にある」ことも感動的ですが、「ショーで見たもの(会ったことがあるもの)がテレビに出ている」驚きもあると思います。ショーとテレビの順番の違いが子どもに与える影響なども気になります。

池下晃司(潮谷ゼミ)「知的障がい児の教育現場における生活支援について」

特別支援学校による児童発達支援の位置づけから、「自立活動の6つの区分」と「合わせた指導」に着目し、今後の方向性について論じています。教職員の専門性の向上を目指すことが大事であり、特別支援学校教諭免許状の取得率を上げること、障がいのある者の教職員の配置、指導主事に対する効果的な研修の3つの方向性を示していました。「自立活動の指導」では、中軽度の知的障がい児の教科教育とのバランスがとれていないことを問題点として挙げています。
会場からは、知的障がい者への具体的な働きかけについて質問があり、生活場面を念頭においた指導をすべきだと、回答していました。

泉屋香奈(潮谷ゼミ)「障がい者支援施設における職員困難」

職員の困難について、どのような問題点があるのかを述べています。バーンアウト症候群をかかえて離職する人が増えているという事実があるようです。一方で、利用者に対する職員の虐待などもあるということで、難しい問題です。今後の改善のためには、プリセプター制度や給与の改善が有効だとまとめています。
会場からは、実習の経験が研究を進めるにあたってどう反映されているかという質問がありました。利用者は職員を家族と思っているので、気持ちをよりくんであげることが大事だということを分かった上で、研究を進めたそうです。
実習が職業経験だけにとどまらず、卒業研究に取り組む際の思想につながっているのはよいことですね。

奥田祐大(潮谷ゼミ)「バリアフリー新法の現状と課題」

バリアフリーとは、歴史的には1974年に国連がバリアフリーデザインを発表したのがきっかけだったそうです。その後、ハートビル法、交通バリアフリー法が統合したバリアフリー新法が2006年に制定されています。この新法には、施策の拡大・充実を実現、地域連携の強化・促進、ハード面・ソフト面の強化促進という3つの見直しの方向性があり、2018年に改正されたそうです。それでもまだ課題はあるということで、バリアフリー法の施策不足を挙げていました。施策会議を開催しても決議されず予定で終わってしまうそうです。健常者と障がい者の溝がまだ深いのでなんとかしたいという想いも発表していました。