「脳と心」という一般教養の授業を担当しています。この授業で,ユニセフ(UNICEF (国際連合児童基金))が取り組んでいる,乳幼児期の子どもの発達(Early Childhood Development:ECD)キャンペーンの活動を取り上げています。
ECDとは,ユニセフが,世界各地の現場で積み重ねてきた経験と,脳科学をはじめとする最新の科学的知見を裏付けに,赤ちゃんが母胎の中にいる10か月間を含む8歳までの時期の大切さを訴える世界キャンペーンです。脳が急速に発達する人生の最初の数年間の極めて重要な時期に,両親がこれまで以上に子どもたちを保護し,より良い栄養,遊び,早期学習経験を与えることを手助けするというものです 👆Click。
SDGsのグローバル目標では,目標1,目標2,目標3,目標4,目標10,目標16,目標17が該当するでしょうか。
2017年9月発表された報告書:「Early Moments Matter for Every Child(すべての子どもにとって“はじめ”が肝心)👆Click」では,主に次の①~④を報告しています。
①約7,500万人の5歳未満児が紛争の影響を受ける地域に暮らし,乳幼児期の脳細胞の結合を妨げる可能性のある有害なストレスを受ける危険性が高まっている。
②栄養不良,不健康な環境および病気が原因で,世界の1億5,500万人の5歳未満児が,彼らの身体と脳が本来持つ能力を十分に発揮して成長できなくなる発育阻害の状態にある。
③64の国々では,2歳から4歳の子どもの4分の1が,脳の発達に不可欠な遊び,読書,歌唱などの活動を行っていない。
④世界の約3億人の子どもが,最近の調査が子どもの脳の発達を損なうとする有害な大気のある地域で暮らしている。
ユニセフは,ECDへの取り組みがSDGs達成の基盤になるとして,特に,SDGsのグローバル目標4「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し生涯学習の機会を促進する」の中のターゲット項目4.2「2030年までに,すべての子どもが男女の区別なく,質の高い乳幼児の発達・ケア及び 就学前教育にアクセスすることにより,初等教育を受ける準備が整うようにする。」の達成を重視しています。
SDGs4
「脳と心」の授業で,この課題の解決策を追求しようと,次のような課題を本学の大学生,附属の高校生に出題しました。
『「全ての子どもが男女の区別なく,質の高い乳幼児の発達・ケア及び 就学前教育にアクセスすることにより,初等教育を受ける準備が整うようにする」について,各学生に割り当てられたキーワードを4つ全て入れて,解決策を提案せよ。』
「こども学科SDGs宣言」実践レポート 環境教育編 👆Clickで紹介した方法と同じですが,学校・メディア・AIなど24のキーワードの中から,フリーの抽選ソフトを使い,4つのキーワードをランダムに選出し,それらを必ず入れて,テーマの課題解決策の提案をするPPTファイルを制作してもらいました。
附属高校3年生の提案を紹介します。この学生には,有名人・時計・AI・外国人のキーワードが割り当てられ,次のような提案をしてくれました。
課題に取り組んでいる過程で,ある生徒が,「なんでこの課題やらないとなの?」とポツリと言っていました。
2015年の国立大学改革プランに基づいた文部科学大臣決定「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」では,大学の人文科学系・社会科学系の学部の再編が議題になりました。それらの動向を受け,ある文学部の先生が,「社会に出て直ぐに役に立つ知識・スキルは,直ぐに役に立たない知識・スキルになる」と仰っていたのが印象に残っています。
大学は,社会に出て直ぐに役に立つ知識・スキルの修得を,あるいは,のみを修得するところではありません。次代は,社会が急激・急速に変化する,世界情勢の大変革期の時代とされます。そのような社会で生きる上で,オープンエンドな課題や解決策が不明な課題に対して,解決策を案出し,実行できる力の育成を目指しています。このような考えで,課題を出題していることを理解してもらえれば嬉しいです。
引用:https://www.unicef.or.jp/ecd/
https://www.unicef.or.jp/news/2017/0198.html