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はやぶさ2:STEM教育

12月6日午前2時30分前,小惑星探査機「はやぶさ2」から放されたカプセルが,オーストラリアの上空で,流れ星のような火球として観測され,地球に帰還したことが確認されました。

 大気圏再突入カプセル

 リュウグウへの着陸

小惑星「リュウグウ」は,地球から約2億8000万Kmの距離で,光速で約15分という近距離にあります。はやぶさ2は,2014年12月に打ち上げられ,リュウグウ到着後,2019年7月から2回目のタッチダウンを始め,リュウグウの地表に金属弾をぶつけ,クレーターができる際に飛び散って積もった地中の砂や石を採取するミッションに挑みました。

リュウグウに到着し,タッチダウンを始めることまではプログラミングで指令を出せますが,地球との通信が難しため,最終段階の着陸する場所は,カメラ・高度計・AIを駆使し,自動運転で着陸点を決定し,ミッションを遂行するものであったとのことです。

topics_20201218_hayabusa2-02.jpg サンプリング装置・採取サンプル

2020年12月15日,リュウグウのガスサンプル,砂粒状のサンプルを採取したことが確認されました。特に,ガスサンプルは,地球圏外から気体状態の物質のサンプルリターンは,世界で初めての快挙です。2010年6月の「はやぶさ」以来の一連のミッションの成功で,サンプルリターン技術は,日本のお家芸といわれ,日本のこの分野での科学技術力の高さを示すものとなりました。はやぶさ2のカプセルは,リュウグウからのサンプルということで,リュウグウからの玉手箱と呼ばれています。今後,分析が進み,地球の水はどこから来たのか? 生命を構成する有機物はどこでできたのか? といった太陽系の誕生・生命誕生の秘密が解き明かられることが楽しみです。

小惑星探査機の打ち上げ,および,イオンエンジン・自律航法・標本採取・サンプルリターンの技術は,概していれば,STEMの総結集です。STEMとは,Science(科学),Technology(技術),Engineering(工学),Mathematics(数学)の頭文字を繋げた造語です。STEMを修得した人材育成を目指すSTEM教育の重要性は,2011年1月のアメリカ オバマ大統領による「2011 State of the Union Address(2011年一般教書演説)」以来,広く知られるようになりました。日本では,2020年度から小学校で全面実施された学習指導要領において,プログラミング教育の導入という形で知られるようになりました。

こども学科の2年次生が受講する「理科」,3年次生が受講する「理科指導法」では,STEM教育を担える小学校教員を養成することを目指した授業を実践しています。学生は,STEM教育指導方法の検討,STEM教材の開発などに取り組んでいます。

理科教育に携わる者として,学生たちが小学校教員となり,将来,JAXAの職員などとして,小惑星探査に携わるようなSTEM人材を育てるような教員となってくれることを期待しています。そのためのしっかりとした小学校教員養成を実践していきたいと思っています。

写真:(c)宇宙航空研究開発機構(JAXA)
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47192110Q9A710C1MM0000 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201206/k10012748501000.html https://www.jaxa.jp/press/2020/12/20201214-1_j.html https://www.isas.jaxa.jp/topics/002522.html
https://www.isas.jaxa.jp/topics/002526.html

オリオン座 観よう

冬の夜空のスターといえば,オリオン座ですね。

 撮影:国立天文台

小学校4年生の時,「月と星」の単元で,冬の大三角を勉強したことを憶えている方も多いと思います。ペテルギウス(オリオンの右肩)の明るさが,観測50年で最も暗くなっていることが懸念されていました。「超新星爆発説」「ペテルギウス自身が出したガスのせい説」などなど諸説が飛び交っていました。ですが,最新の観測結果では,以前の明るさを取り戻しつつあることを示し,しばらく爆発の恐れはなさそうとのことです。

 ペテルギウス 撮影:国立天文台

オリオン座には,多くの方の思い入れがあると思いますが,私もその一人です。院生の時の冬の時期,帰りにバスを待ちながら,六甲山の中腹から,近景に神戸の夜景,遠景に大阪湾,それら上空にVRゴーグルで見たような,オリオン座が夜空一面に広がっているのを見るのが楽しみでした。今日も晴れないかな,雲がかかっていないといいなと思いながら,帰りのオリオンを見るのが楽しみに,論文を書いていました。壮大な自然事象に大きな感動をし,古代の人々が星座に思いを馳せ,物語を想像したことがよく理解できる体験でした。

研究者の性としてはわかりますが,天文学者の中には,超新星爆発が観測できないと考える人もいるようで・・・,オリオン好きとしては,性を越して業ではないかと複雑な思いがします。

大阪では,12月,19時:東の空~24時:南の空~4時:西の空で観られます(凡そです)。キリリとした空気の中,暖かい服装で,澄んだ冬の夜空を観察するのも,この時期の楽しみであります。

最近になって,ペテルギウスの大きさ・地球までの距離がこれまで考えられていたことと違うようだというようなことも明らかになったようで,よく知られ,観測もされて来ましたが,まだまだ新たな発見もあるようです。On Line授業の中,いつもよりは少し時間を自由に使えるのではないかと思います。爆発はまだ先のようですが,言いたいことは,つまり,見られるうちに,オリオン座を観ましょう。

参考:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/010600006/ https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/022700132/