大学生なら卒論を(2018年度 その3)

卒業研究発表会の続きです。面白いテーマも多く、卒論完成時を出発点にして、さらに進めたらよいのにと思うものもあります。しかし、就職して仕事をはじめたら、仕事と無関係のことに時間を費やすことは難しくなりますから、ほとんどの学生が、この卒論がゴールとなります。少し残念ですね。それでは、5人分紹介します。

赤土優太(潮谷ゼミ)「乳児期における虐待死の現状とその原因」

虐待死の死因や乳児虐待の要因について分析しています。やはり、望まない妊娠と若年出産が大きな問題であり、結論としては、児童相談所の改善は必要だとしています。48時間以内訪問のルールが守られないなどの問題点を解決し、養育環境の改善を目指さなければならないようです。会場からは、具体的にはどのような取り組みからやるべきかという質問あがあり、まず、児童相談所の専門員を増やすことと回答していました。会場からは、親の就労状態にももっと注目したらよいという意見があり、議論しました。

庄山秀人(杉本剛ゼミ)「たばこが人にあたえる害についての研究」

受動喫煙防止法の認知度等、受動喫煙に着目した研究です。受動喫煙により、乳幼児突然死症候群のリスクが10倍になることなどの問題点や、受動喫煙防止法が2018年に制定されたにもかかわらず認知度が低いことなどを問題視しています。アンケートから、副流煙についての知識はあるが、受動喫煙防止法は知らない喫煙者が多いことがわかりました。法律の内容を喫煙者に認識させることが重要だと結論づけています。会場からは、法律は、個人の行動ではなく、施設に対して制限をする法律ではないのかという質問がありました。法律で制限するのは施設だが、認知度が拡がれば個人の行動にも影響があると考えていると回答していました。
法律と人の行動の関係の面白さを考えさせられる研究です。法律違反になるからやらないのか、法律違反かどうかと関係なくやらないのか、自分自身の行動を振り返っても、この2つがあると思います。この研究の通り、法律が認知されることで、個人の喫煙にも影響力がでてくるとよいと思いました。

杉田優(渡邊ルゼミ)「人生における出逢いと転換期 −冨樫義博『HUNTER×HUNTER』の闇と光−」

キルアの姿をおいつづけて、そこに描かれている出会いと転換期を分析する研究です。キルアは家族の呪縛があり、ゴンと出会えて家族からはなれることができたそうです。さらに、イルミからの針をつかった物理的な呪縛も解き、完全に呪縛を解放されて前に進むことができました。親に決めれた人生が楽しくない中で、友達の果たす役割、呪縛を乗り越え自由を手にしたという話を、今の子供が読むことで、キルアと一緒に自分自身の成長プロセスを体験することができると分析しています。会場からは、論文のタイトルにある「闇と光」とは具体的に何かという質問があり、やりたいことができないという意味での闇、冒険を通して呪縛を解くことを光としていると回答していました。
自分の行動を縛るものが、何かあるかと考えてみたくなる研究です。

竹中優汰(渡邊ルゼミ)「組織の中の家族 〜『NARUTO』より、〈弟〉うちはサスケの選択〜」

感情の抑揚が少なくあまり表にでないサスケがおこなった選択と背景を分析する研究です。サスケは、人を信用することができないために、感情に屈折があり、自分の考えがまとまっていません。しかし、ナルトたちを家族とみるようになったように根底には家族を思う姿があり、それを元に答えを探します。家族のことを捨てずに想い続けているサスケの姿が読者を惹きつけるとまとめています。
家族について述べる中で、こども学科ならではの視点があれば、もっと面白いものになるのではないかと感じました。

田伏美雪(高岡ゼミ)「嘘は見破ることができるのか」

嘘と欺瞞の違い、なぜ嘘が見破られにくいのか、についての研究です。表情への感情のあらわれは、1/25秒しかないそうで、これも嘘が見抜けない要因になっているとのこと。人の嘘を見抜くのが得意かどうかのアンケートを実施し、映像を見たときに話し手が嘘をついていたかどうかを見破っていたかどうかとの比較を行っています。アンケートで、見破るのが得意とした人が嘘を見破っていたわけではないく、嘘を全部見破れたのは女性だけだったという面白い結果が出ています。会場からは、勘違いも嘘に分類するのかという質問がありました。勘違いや虚言癖のような無自覚なものも嘘になるということです。
無自覚なものも嘘ということになると、年を重ねるにつれて勘違いが増えたら、嘘つきになっていくのでしょうか。心配になってしまいます。