大学生なら卒論を(2018年度 その4)

卒論研究発表会の続きです。昼休みをはさんで、午後も発表が続きます。今回も5人分紹介します。

チャンティ トゥイ ズオン(渡邊ルゼミ)「ベトナム北部サパの子どもの生活」

ベトナムのサパの少数民族の子どもの様子についてのフィールドワークです。サパの人々の暮らしを文献で調べた後に、観光客相手に行商をしている女性や子どもへの聞き取り調査を現地でしています。 学校に行っていない子がいるなかで、生活のために観光客と話をして、英語がペラペラになっていく子どもの存在などを報告しています。観光によって、大人は仕事があるが、子どもの状況はよくないので、将来はサパの子どもたちを助けたいという思いも発表していました。

冨森政輝(潮谷ゼミ)「障害者虐待の現状」

障がい者虐待は多様で、法の定義でカバーできないという問題点に注目しています。2012年に「障がい者虐待防止法」が施行され、守秘義務よりも通報義務に重きをおくようになっているようです。相談通報の届け出内訳として、事業所職員16.8%、設置者・管理者9.9%、相談支援専門員9.3%というように、本人や家族以外からの通報も多いことが分かります。
施設内における障がい者虐待の要因としては、仕事に忙殺されることで人権感覚が削られてしまったり、施設が閉ざされた世界であること、障がい者の意思決定支援がないことなどがあるようです。また、障がい者虐待防止法自体の課題もあるそうです。障がい者を分けて教育することにより、距離感を生じていることも問題だと指摘しています。
分けて教育することによる距離感というのは、私も思い当たる節があります。通っていた小学校のとなりは特別支援学校(聾学校)だったのですが、一緒に遊ぶことはないだろうという印象を持っていました。教室の中が健常者だけというのも逆に不自然だと思います。聴覚障害の学生の卒論指導をしたこともありますが、同じ学部の同期生(300名弱)の中で最もよい卒業論文を完成させましたし、ゼミの他の学生も大いに刺激を受けていました。分けずにやることは確かに困難さを伴いますが、得るものも大きいと感じます。

長野城也(渡邊ルゼミ)「岸本 斉史『NARUTO』論ー師弟・仲間・成長ー」

ナルトがイルカ、カカシ、自来也、ミナトから学んだことをまとめ、サスケとナルトの違いを、サスケには復讐心がある。ナルトには見返してやりたいという心があると分析しています。一方で、師弟、仲間、家族に共通していることは「愛」であり、NARUTOが教えてくれることは、家族のいるありがたさや、絆の深さ、つながりを通して人が成長していくことだと分析しています。
この研究も、こども学で学んだことをもっと活かして議論を深めてくれたら、さらに面白いものになるのではないかと思います。

松本綾希(渡邊ルゼミ)「『智恵子抄』論 〜本当の愛とは一体〜」

「智恵子抄」は高村光太郎が一人の女性を思い描いて書いています。各章における光太郎の思いは、智恵子が精神の支柱から永遠的存在となり、幸せにつながる様子が記されていますが、相手の魅力を見出し、自分の生きる糧にして、詩に結実させたとまとめています。会場からは、二人の愛は、恋愛や夫婦愛にとどまらず、障がいを持つ人を支えるやさしさや愛情に通じるものではないかという質問もありました。

宮崎美奈歩(渡邉由ゼミ)「面前DVの背景と対策」

子育ての「あたりまえ」とは何かという考えから、この研究にたどり着いたようです。「面前DV」とは、児童が同居する家庭における配偶者への暴力であり、児童にいちじるしい心理的外傷を与える言動を行うことだそうです。子どもへの影響や、DV防止法のどのような点が不十分なのかなどを報告していました。会場からは、加害者に対するアプローチや、近所でのDVを感じたときの対応などの質問があって盛り上がりました。