大学生なら卒論を (4)

前回の続きです。各卒論への個人的な考えや感想を記しますが、論文を書いた学生や指導した先生からは「その見方はおかしいよ」ということもあると思います。その場合は、私までお知らせください。

佐々木志帆(芝﨑ゼミ)「子どもの出生順位と性格との関連」                                                                           

子どもの出生順位と性格との関連については、一般的には関連があると考えられていましたが、2015年に、出生順序がその人に与える影響は限りなくゼロに近いという研究結果が発表されたそうです。この研究では60名を対象にした25項目のアンケート結果を、長子、中間子、末子別に集計しています。アンケート項目は親との関係を問うものであり、育てられ方に違いがあるか、性格に影響があるかを調べています。その結果として、長子は責任感が強くしっかりもの、中間子は独立心が強い、末子はわがままでマイペース、という世間一般のイメージの通りではないという結論を得ています。インタビューからも同様の結論だったようです

フロアからの質問として、世間一般のイメージとは違うとしても、出生順位によって育てられ方に違いが分かるという結果が得られのではというものがありました。そのように見える質問項目もあります。

プロスポーツ選手は次男が多いという話もありますし、出生順位は関係ないと言われてもなかなか信じにくいですね。だからこそ、出生順位に関係ないという結果が注目されるのだと思いますが。

多くの人が関心があり、まだまだ本当の結論は出ていないのではないかと思わせる、興味深いテーマでした。

佐々木雄大(渡邉由ゼミ)「現代の若者における『友情』とは何か」

インターネット社会における人々の友情関係の違いと、それによる課題をつきとめようとする研究でした。人とのつながりを、利益利得の関係と繋がることそのものが目的のものとに分類して考察しています。AIの友達はあり得るのかといった質問もありました。そのような時代だからこそ、より人との繋がりが重要になると思っていると考えているようです。

新しいツールの存在が、人間関係にどのような影響を与えるのかというのは、そのツールの存在する意義を知る意味でも重要なテーマです。人とのつながりということに関しては、ダンバー数というものがあり、親しくつながることができる人数の上限は150人程度だと言われています。このダンバー数を根拠として、インターネットでの非常に多くの人とのつながりは希薄なものだとする考え方があります。このあたりにも触れて掘り下げてくれると、さらに面白い研究になったのではないかと思いました。

志原晃介(梅田ゼミ)「鉄塔の生み出す電磁波の危険性」            

4mG以上の磁気で人体に影響があることが多くの国で報告されており、日本でも門真市の変電所の近くの住民のガンの発生率が高いという報告があります。この研究では、実際に東大阪市と門真市の電波塔や変電所周辺での磁力を気象条件を揃えた上で測定しています。電波塔の周辺から23.9mGや9.2mG、変電所の近くからは3.8mGや8.0mGといった数値が測定されたそうです。100m以上離れると1mGも測定されないようであり、この距離が健康被害のない距離だと報告しています。

携帯やスマホなどの電磁波の身体への影響などが注目されているなかで、それよりも電波塔の磁力の方が値が大きく、都市部では問題となっているという興味部会結果でした。活断層の研究もそうですが、居住するのに危険性の高い地域を特定する研究というのは、その結果が住民に及ぼす影響が大きいため、結果の発表がなかなか難しいという現状もあるでしょう。自分の住んでいる地域の環境については、自分が積極的に知ろうとしなければならないということを、この研究は示唆していると感じました。

嶋恵亮(渡邉由ゼミ)「古民家の現代的意味―人が落ちつきを感じる理由とは―」

なぜ木造建築が好まれるのか、なぜリラックス効果を感じるのかなどを分析し、古民家の定義や価値、古民家による地域活性化について調べた研究でした。古民家のビジネスとしての大きな可能性に注目しています。

変化の激しい時代では、数十年前のものがいつのまにか別の価値を持ってしまうことがあるという点が面白いですね。

曽田志穂子(梅田ゼミ)「四つ葉のクローバーの成育条件」         

図鑑によれば、四つ葉のクローバーは三つ葉が踏まれてはがきれて四葉になるとあり、論文には、斑紋が明瞭か不明瞭かで四つ葉の発現に違いがある遺伝的なものだとされているようです。これらを検証しようという研究でした。実際に三つ葉のクローバーを踏んでみたり、切れ込み入れてみても四つ葉にはならなかったようです。実際に四つ葉が多く生息している地域の特徴から、土の湿度が関係あるのではないかと着目して調べています。土の乾燥した場所では、クローバーの根に根粒細菌が共生し、その遺伝子がクローバーの遺伝子に作用して四つ葉のクローバーが発現した可能性を指摘しています。

フロアからも質問が多数でており、このテーマの難しさがよくわかります。調べることで、様々な可能性を見つけることが出来ますが、それが原因だということを断定することはとても難しいのです。仮説を実証することの難しさをあたらめて実感しました。

今回はここまでです。午前中の発表についての紹介が終わりました。午後の部がまだ残っており、丁度半分紹介したところです。