大学生なら卒論を (3)

前回の続きです。各卒論への個人的な考えや感想を記しますが、論文を書いた学生や指導した先生からは「その見方はおかしいよ」ということもあると思います。その場合は、私までお知らせください。

加地優大(芝﨑ゼミ)「嘘は見破られるのか」

質問に対して嘘をついているかを見破るときに、視線、動作、言葉(発言)のどれを手がかりにすると最も見破りやすいのかを実験した研究でした。小さな紙きれを片方の手に隠した人に、「隠している方の手を見てください」「隠している方の手に力を入れてください」「どちらに隠しているか答えてください」というような質問をします。隠している方に視線を向けるように指示したときが、最も嘘が見破られるという結果を報告していました。「目は口ほどにものをいう」は本当だったという結論でした。諺を裏付ける結果になったということは興味深いことです。そして、人をだます犯罪も、相手に姿を見せることなく電話を使ってだますことが多いなと、ふと思うのでした。

鴨田優花(芝﨑ゼミ)「聴覚障がい者は自身の障がいについてどう受けとめているのか」

コンビニエンスストアでのアルバイトで聴覚障害のお客様に出会ったことが、このテーマに取組むきっかけとなったそうです。補聴器などをしていなければ、聴覚障害者だということは一見ではわかりません。災害時に、聴覚障害者が、情報を得ることが遅れたために逃げ遅れたケースがあります。聴覚障害者であることを分かってもらわないと、音声による情報を与えただけで十分だと思われてしまいます。この研究では、障害者に対して健常者が持つべき配慮のみではなく、障害者自身が、自分を知ってもらうために情報発信することの重要性に触れています。その上で、災害時には、地域の人々が聴覚障害者と共に避難するような関係づくりが大事だとのことです。

私自身、聴覚障害の学生の卒論指導をしたことがあり、そのときのことを思い出しました。情報格差をつくらないようにすることは本当に難しいです。発信者、受信者共に配慮すべきことがあるというのは頷けます。

川崎翔(梅田ゼミ)「ベランダで稲を育てる方法」

都会の幼稚園・保育園での自然体験としての米作りを成功させるために、ベランダでの米作りを、土や日光などの条件を変えて実験した研究です。光の必要性があらためてわかり、田んぼの土よりも赤玉土や培養土の方が十分に収穫できたそうです。その理由として、赤玉土と培養土は、栄養分を分解して稲の根に供給する微生物の住む空隙が多いことであると考察しています。

都会の子どもたちに米作りを成功させるための条件が分かったということで、米作りに挑戦する幼稚園・保育園にとっては、とても意味のある結論がでたといえます。

古泉元希(梅田ゼミ)「炭酸は何を溶かすのか」    

コーラが骨を溶かすという俗説について検証した研究でした。魚の骨、乳歯、サンゴの骨格、カキ殻、コンクリートを、ウィルキンソン、三ツ矢サイダー、コーラの3種類の炭酸水に溶かす実験をしています。コーラで溶かしたサンゴが一番溶けているので、これが俗説の原因だとしています。エナメル質で守られた歯は炭酸でも溶けませんが、虫歯状態になると溶けてしまうこともわかったようです。

10日間かけて溶かしているので、実際に同じことが口の中で起きるわけではないですが、歯磨きの大事さを子どもに伝える実験ですね。

酒井将治(渡邉由ゼミ)「第一印象が人に与える影響とは~企業が求める学生像を探る~」                                 

出会って6秒程度で決定される第一印象に関する書籍や就職活動の本などを調べて、第一印象が良い人、良くない人の特徴や、印象をよくする方法を挙げていました。第一印象の悪さを挽回することは非常に難しいと同時に、出会って少し話をする程度の時間帯に与える第二印象のときに挽回するしかないようです。

大学は4月になると新しい人が沢山キャンパスに現われます。お互いに良い第一印象を持つことができるように、第一印象に関する知識を持っておくことは意味がありますね。

笹井靜(芝﨑ゼミ)「男女の嫉妬心に違いはあるか」         

一般的に、男性は経済力や社会的地位に、女性は容姿に嫉妬すると言われているなかで、経済力や社会的地位が同じ学生で調査したらどのようになるのかという研究でした。インタビューから分かったこととして、嫉妬をしない人は安心している人であり、相手から束縛されているそうです。相手の好意を確認できるので余裕が生まれ相手を束縛しなくなります。結果として、相手は自信が持てないので自分のことを束縛するというループがあるそうです。学生の場合、男女に関係ないという結果となっていました。学生から社会人になると急に変わるのかはなぜなのかという質問がありました。不思議ですね。

今回はここまでです。続きはまた後日に。