大学生なら卒論を (2)

さて、今日からは2月6日の卒業研究論文発表会の様子を伝えていきたいと思います。各卒論への個人的な考えや感想を記しますが、論文を書いた学生や指導した先生からは「その見方はおかしいよ」ということもあると思います。その場合は、私までお知らせください。その指摘自体がブログのネタになりますので、大歓迎です。

全ての発表を見終えた感想を一言でいうなら、「予想を上回る卒論が多くて大いに楽しめた」でしょうか。それでは発表順に紹介します。

岩井惇(梅田ゼミ)「都会のクマバチはどこに巣を作るのか」      

自然観察に適した昆虫であるクマバチを対象とした研究でした。枯れ木や古い木がない都会でどこに巣をつくるのかを、学生が自らの足でクマバチを追いかけて探しています。防虫効果があるはずのクスノキに沢山の巣穴があったり、枝を足で掴んで口で穴を空けるために、幹や枝がザラザラの温帯性の樹種のみに巣があったりなどの発見を紹介していました

昆虫の生態など、まだまだよく分かっていないことが沢山ありそうです。マス・メディアにもよく登場するスズメバチではなく、クマバチを調べるというのがよいですね。

大石貴宏(梅田ゼミ)「幻の上町断層は実在するのか」

重力地図に基づいて断層の場所を推定して、GoogleMapと照らし合わせながら、歩きまわって断層の存在を示唆する壁の亀裂や石垣の大きなずれを発見していました。昭和以降にも断層の活動があることが分かったり、断層の証拠となるもの全てが南北に一直線に並んでいたということで、非常に面白い結果でした。

自分の足を使って、推定した断層の場所を確認していましたが、理系の研究の基本ですね。そのプロセスを体験できたことはとてもよいことだと思います。自分の足では辿り着けない場合や、人間の目では見ることが出来ない場合には、人工衛星やらカミオカンデなどが登場するわけですが、人間の力でも、まだまだ面白い研究ができますね。

阪神淡路大震災以前は全く注目されていなかった「活断層」ですが、熊本の地震もあり、非常に重要な研究対象です。多くの人が自分の住む場所の近くの活断層については知っておく方がいいでしょう。

面白い研究だったので、少し紹介が長くなってしまいました。

岡田智(吉岡ゼミ)「日本における食生活と平均寿命の変化―昭和期から現在―」

食に対する意識と寿命の関係についての研究でした。健康という言葉についての認識が、日本では、病気でなければ健康なのに対して、WHOの健康定義では、いかなる状態においても完全であることが健康であるとしているなど、根本的な考え方が違うということに触れていたのが興味深いものでした。

何を食べれば、健康で長生きできるかということは多くの人が関心を持つテーマであり、また、「〇〇が体にいい」という常識が実は間違いであったりなどということもよくあります。食生活と健康・寿命の関係は、長い時間をかけたデータ収集と分析が必要でしょう。その意味で、重要なテーマの卒論だと思います。

岡野大(渡邉由ゼミ)「大学生のギャンブル依存症と課金型ゲームアプリの関係性」                                                                     

アプリの課金とギャンプルの違いについての分析が興味深い研究でした。学生対象のアンケートによると、ギャンブルには悪いイメージがあるのに、アプリの課金になると「趣味に費やしたお金」という認識になってしまうとのこと。ギャンブルには破産のイメージがあるが、アプリの課金にはそれがないらしいです。今後、アプリの課金で破産した人の話などが報道されるようになると状況は変わるのでしょうか。

スポーツの世界では、リスクを冒して得点を取りに行く場合に「ギャンブル」という言葉を使います。勝つためには推奨される行為です。アメリカンフットボールでは、しばしば4thDownギャンブルがあります。先日のスーパーボウルでもありました。「ギャンブル」という言葉の持つイメージも人によってかなり違うのだろうなと思います。

岡本成広(潮谷ゼミ)「待機児童問題の現状について」                                                                    

待機児童の現状を調べ、改善案を示す研究でした。保育所不足の要因として、土地生産性の低さなどが原因であることや、保育士の年収の問題を挙げていました。給与改善のためには、保育士を必要としている地域を割り出して、部分的に保育士給与を上げるという案を主張していました。これから先、保育士になろうという世代にとっては、給与はやはり最大の問題ですね。

小倉朋佳(芝﨑ゼミ)「不登校児に、私達ができること」                                                                        

正義感も強く、小学校では活発だったAさんが、中学1年のときに不登校になってしまった事例から、特に家族がどのように関わっていったのか、不登校になってしまったAさんとの関係がどのように変化していくことが望ましいのかについての研究でした。家族は、担任の先生に相談させたり、学校のカウンセリングを受けさせたりしたが、先生との信頼関係がなかったり、相談センターでは何を聞かれるのか怖がったりするなど、改善が見られなかったとのこと。しかし、無駄に思えたこの家族の動きは、家族のAさんへの対応が「心配」から「受け入れる」への変化を導き、実は意味があったということが興味深いものでした。

今回はここまでです。次回(明後日くらいかな?)をお楽しみに。