卒論紹介も残り2回です。
西村和香奈(芝﨑ゼミ)「ストレスに強い人と弱い人のちがい ―強い人はどのように対処しているのか―」
ストレスに強い人と弱い人の違いとは何か、ストレスを持っている人がどのくらいるか、対処法などをインタビュー調査した研究でした。ストレスに対しては強い弱いという捉え方よりも、どのように考え向き合っていくかがポイントとのこと。ストレスに対して自分なりに免疫をつくれる人が、いわゆるストレスに強い人ということになる。ストレスは消えないし、なくならないものなので、無理して無くそうとしないだけでも心が楽になると、インタビューから結論づけています。それにしても、このインタビュー結果の一番おどろきだったところは、調査対象12人から、ストレスに弱い人が見つからなかったということ。多くの人が、ストレスあるけどなんとかしているということなんでしょうか。
濱野吾郎(梅田ゼミ)「働きアリはなぜ卵を生まないのか」
女王アリは巣に1匹しかいないのに、アリの巣はものすごいスピードでふえていることに疑問を感じて始めた研究です。トビイロケアリで飼育実験を試みたところ、1ヶ月でなんと全滅。外にいる働きアリを捕まえてきたものの、外の働きアリはおばあさんアリだというのが原因のようです。中にいる若い働きアリを捕まえてきて再度飼育実験。その結果、働きアリだけであっても卵を産み繁殖したそうです。女王アリがいなくても繁殖するにも関わらず、女王アリがいるのはなぜかという考察では、女王アリがいる方が効率的であることを挙げていました。女王アリはオスメスの産み分けもでき、働きアリに役割を与えることで効率よく繁殖できるそうです。働きアリが巣にもどれなくなったとき、最初は女王アリのいない特殊な巣になりますが、オスアリが来ると、交尾によって女王アリが作り出されて、本来の巣に戻るということです。
身近にいる昆虫を題材にしても、まだまだ興味深いことができますね。動物に発信機をつけて位置情報を取得することで、動物の新しい生態が分かるということがありますが、アリは、その小ささ故に、他の動物と同じような方法が使えないところが面白いところです。
福田潤一(渡邊ルゼミ)「『ONE PIECE』における「子ども時代」の意味」
ONE PIECEでの、ルフィ、エース、ナミの子ども時代について紹介し、作品におけるその意味を考えるという研究です。子ども時代はそれおれの夢につながっていて、その夢が成長してからも変わっていないところが作品の魅力になっていると分析しています。
いわゆる大作において、人物を掘り下げていく手法として、過去を描くということがあります。朝ドラや大河ドラマでは、その人物の子ども時代から始めていくやり方が当たり前です。漫画などでは、完全に時間順にするわけではなく、後から過去について描くこともあります。その過去と、現在に差を持たせることで、その人物のターニングポイントがあったことを示唆することもあります。
より多くの作品を対象にして、長編漫画での時間の流れについての分析なども面白いのではないかと思いました。
藤田剛志(梅田ゼミ)「犬の殺処分を無くす方法」
ドイツでは殺処分がゼロ。日本ではどのようにしたらゼロにできるのかについての研究でした。ドイツでは犬の大きさに対して、動ける範囲や窓の大きさなどもきめられていて、ペットショップがないそうです。飼いきれなくなった犬は、将来的な譲渡を目指して保護され、毎年1万匹が新しい飼い主へわたるようです。日本とドイツの根本的な違いとして、ドイツでは自然は人間が管理するものであるという考え方があり、日本は自然をコントロールできないという自然観がある。この自然観があるため、出生の段階での規制よりも、保護施設に預けられた犬の出口を広げることが大切であると考察しています
自然に対する人間の考え方は、国単位でも違いますし、日本であれば地域毎にもかなり違うでしょう。桜島などを見ると、毎日これ見て生活している人は、そうでない人には持つことのできない自然観を持つのだろうと思います。逆にいえば、他の国の文化を理解するためには、その国の自然観を理解することが必要だと思わされる、興味深い発表でした。
松澤謙希(潮谷ゼミ)「ノーマライゼーションの基本的考えとその拡がりについて」
この研究では、ノーマライゼーションの概念に関わる3人を分析し、ノーマライゼーション思想について述べ、そこから生まれた思想として、インテグレーション、ソーシャルインクルージョン、ピープルファースト、バリアフリー・ユニバーサルデザイン等について述べています。最後に、日本での地域包括ケアシステム構築のために、ノーマライゼーションの実現が求められているとしています。
バリアフリーは、既に多くの人に浸透している言葉だと思いますが、そこに至る思想の流れなどは意識したことはありませんでした。ユニバーサルデザインも、学生に対して説明することがありながら、その源流には知らず、自分の不勉強さを痛感させられる発表でした。
松田賢太(渡邊ルゼミ)「『のりもの絵本』の世界―〈仕事〉が教えてくれるもの─」
のりものが擬人化された「のりもの絵本」について分析した研究でした。 働くということに触れることができる、海外や日本の乗り物絵本を紹介していました。最も有名なものはきかんしゃトーマスのシリーズで、多彩な生きたキャラクターによりリアリティのある世界感が描かれているとしています。タイプの異なる同僚の存在などは、確かに現実社会と同じですね。
様々なのりもの絵本の共通点として、読み手の「創造性」を刺激すると分析していました。自然と仕事や働くことを描き、失敗や成功に触れることができるため、失敗を負の方向に解釈して創造性を封印してしまうことを防げると考察しています。
確かにのりもの絵本は印象に残りやすいですね。国が違っても同じように機関車の擬人化が行われていたりしますから、仕事をする機械を擬人化するということには、世界共通の意義があるのかもしれません。思い入れのある機械の話をするときに「この子は…」みたいに話す人も多いですよね。
今日はここまでです。次回は卒論紹介最終回です。