従来は親権喪失の制度は有りましたが、親子関係の断絶という観点から、どうしても申し立てが慎重になっていました。しかしそれにより虐待防止の有効な手段になっていないという批判がありました。
そこで親権の2年間の停止ができるようになりました(平成24年)。その一事例です。
Xには前夫との間に長女、次女そしてAの3人の子がいました。他に父親の異なる男児(B)がいます。XがAとBを養育できないということで児童養護施設に入所することになりました。これが平成22年のことです。
3年後の平成25年にXとYは結婚し、Yは4人の子どもと養子縁組をしました。AとBが外泊して親権者らの家に泊まった時に(Aに対する)暴力行為があったようです。Aに対し、殴る、屋外に出す、食事を抜くなどです。
やがて平成28年に児童養護施設入所措置が解除になり、AとBは親権者らと同居するようになりました。
そしてAに対する殴る、食事を抜く、トイレに閉じ込めるといった虐待行為は続きました。
ある日AとBが屋外で震えながら立っているところを保護(一時保護)されました。児童相談所長は親権者らのAに対する親権の2年間の停止措置を求めて審判の申し立てがなされました。
東京高裁は、Aに対する親権者らの虐待行為があり、それによりAが親権者らに強い恐怖心を抱いており、親権者らが今後Aを適切に養育できることは期待できないこと等の理由で2年間の親権停止を認めました(東京高決 令和元年6月28日)。
現在は虐待された本人からも(親権喪失や停止の)申し立てが可能になりました。
子どもの健全な成長を実現するため社会が果たすべき役割役割は大きいものがあります。特に保育の現場では、子ども達の「変化」に日々注意していなければなりません。
皆さんもこのような認識を持ち続けて下さい。
記事:野々村宣博