新連載❕ むちやぶり企画第5回「日常」

 

新連載!テーマむちゃぶり企画第5回「日常」

今回のテーマは、「日常」です。

大辞林によれば「日常」は、「ふだん、つねひごごろ(松村、1988ː2076)」としています。物や洋服では、ふだん使い、ふだん着と言いますね。それに対して、ハレの日、ハレ着となります。つまり、表彰式の場面など非日常の場面やそのような場面での洋服となります。このことを福祉領域に繋げると足立(2005ː3)のいう「共生」に繋がると言えるでしょう。足立は、「『共生』を仏教思想の基本を示す言葉の1つであり、その意味は、仏教思想の『縁起観』、すなわち、すべて存在するものは、縁に由って存在するものであり、すべては因縁会遇の結果であって、一つとして固体的な存在はない、という考え方に裏打ちされた言葉である」としています。そういう意味では、日常は、過去の日常、これからの非日常を含め、他者とのかかわりのなかで生きていることを再認識させると言えるでしょう。人は、ご縁のなかで活かされていることになります。ともに生きるとは、足立(2005ː3)の言うように、「空間的、時間的」な意味があるという見解に納得がいきます。

このような考え方は、最終的には、「for him(彼のために)ではなく、Together with him(彼と共に)(2005ː3)」の考え方であり、糸賀一雄が言った「この子らに世の光」をではなく、「この子らを世の光に」の思想に共通しています。私たちは、利他的に生きることをつい忘れ、利己的になってしまい、排除の論理で行動する場合があります。

しかし、日本には、季節があり、お墓詣りといった習慣があります。このような紅葉、クリスマス、お正月、寒さ、先祖との対話になかで日常の景色が変化するのです。介護、社会福祉は、そんな日常が病気、怪我、災害、困窮することで、クライエントの生活が変化するのです。福祉専門職には、そのようなクライエントの苦悩、苦しみ、虚無感にどのようにかかわるのかが問われるわけです。

 

支援では、知識・技術が重要です。

しかし、それを支えるのは、福祉観、人間観、福祉マインドです。私も含め、人間は、フロムの言うように未完の存在です。人とのかかわり、ご縁を頂き、お芝居、小説に接するなかで、疑似体験、追体験をし、他者の日常を感じることで福祉職に必要な気づきのアンテナを磨くことに繋がります。クライエントの日常の景色に彩を添えられるような、心と心を通わせた介護は、科学的介護との融合のなかで、創造的に再構築していきたいものです。

皆さん、日常の生活の中に、非日常の時間を組み込んでいきませんか。

具体的には、朝夕の通勤ルートをちっと変えるだけで、道端の草花に出会い、心がやすらぎ、季節の移ろいを感じることになります。日常と非日常は、重なり合って化学反応が起こし、人生が豊かになる気がします。

 

文献

足立叡(2005)『新・社会福祉原論』株式会社みらい.

松村明(1988)『大辞林』三省堂.