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連載企画:学科教員によるワンポイントレッスン (7)

外国語としての日本語:これ? それ? あれ?

本学科には多くの留学生が在籍しています。留学生は,さまざまな地域からから介護を学びに来ていますが,共通語は日本語です。

日本語は決して難しい言語ではありませんが,物や話の内容を示す,指示詞 (「これ」「それ」「あれ」) の理解と習得に苦労する留学生が多いです。どんな点が難しいのでしょう?

今日は,留学生と日本語教師の会話を通して,日本語の指示詞を外国語として見てみようと思います。

留学生:先生,これ,それ,あれって,「これ」が近い物,「あれ」が遠い物,「それ」が中間ぐらいって習ったんだけど,なんか違うような気がするんです…。

日本語教師:いいことに気づきましたね。留学生が日本語の学習を始めると,なぜかそのように教わりますね。でも,もしかしたら,それは忘れたほうがいいかもしれません。

留学生:ええっ! そんな! せっかく苦労して覚えたのに…

日本語教師:うん,せっかく覚えたのに「忘れて」なんて言われるとちょっと困りますね。でも,少し考え方を変えるとわかりやすくなると思いますよ。

留学生:どう考えを変えればいいんですか?

日本語教師:「これ」「それ」「あれ」に距離は関係ないんです。

留学生:???

日本語教師:下の図を見てください。ポイントは「領域」です。(1) 話し手,(2) 相手,(3) 示す物,の3つが同じ領域いる/ある場合,(3) 示す物,は「これ」になります。

留学生:???

日本語教師:???ですよね。

留学生:なにがなんだか…

日本語教師:もうちょっとがんばってみます。ポイントは「領域」です。下の図みたいに,(1) 相手,(3) 示す物,が同じ領域,(1) 話し手だけか領域の外という場合があります。このような場合は「それ」になります。

留学生:うーん…。でも,領域ってどうやって決まるんですか?

日本語教師:確かに「うーん」って言いたくなりますね。この「領域」というのは,実は,話し手 (と相手) の主観なんです。上の図の場合は,2人の主観がこんな領域になっているってこと。

留学生:はあ。

日本語教師:すぐにわからなくてだいじょうです。ちょっとずつわかってきます。

留学生:じゃあ,「あれ」ってどんな関係になるんですか?

日本語教師:いい質問ですねえ。下の図を見てください。「あれ」の場合,(1) 話し手 と (2) 相手が同じ領域にいるけど,(3) 示す物が二人の領域の外にあります。その時は「あれ」になります。

留学生:ああ,言われてみると,(1) 話し手,(2) 相手,(3) 示す物 の関係が「領域」で違いますね。

日本語教師:そうなんです。これが基本です。この後,絵や動画を使って練習すると,割と簡単に使えるようになりますよ。

留学生:そうか,ちょっとやる気になってきました。ところで先生。(3) 示す物が目に見える「物」の時は,いいんだけど,話の中の「これ」「それ」「あれ」はどうやって考えればいいんですか?

日本語教師:いい質問ですね。今日勉強したことを基本にすれば,そんなに難しくありません。まあ,これは次回のお楽しみにしておきます。

留学生:・・・。