1月8日の公開講座では本学科の横田詩織先生が「さまよえるモティーフー伝説からファンタジーへ」と題した講座をオンラインと対面の両方で行いました。
横田先生のご専門はドイツ・オーストリア文学です。
オーストリアにも留学経験がありドイツ語が堪能です。
この日は先生のご専門のグリム童話などの民話研究の視点から、古くから人々に親しまれてきた物語や伝説の登場人物やキャラクターがどのように現代まで受け継がれ、変化してきたかについてお話して頂きました。
その一例として紹介されたのがアマビエです。
昨年のコロナ禍で、SNSを通じて爆発的な広がりを見せた「アマビエ」伝説は、今や地域振興のマスコットに選ばれるほど親しまれています。
アマビエは江戸時代に熊本県の海に現れた疫病封じの妖怪ですが、「疫病流行時にアマビエの姿を描いて人に見せよ」という本来の“お告げ”から、コロナ(COVID-19)収束を祈願して描こう、という呼びかけを契機としてCOVID-19収束祈願の象徴になりました。
アマビエのように、伝説上の存在がモチーフ化して、まったく別の場所で活躍することは珍しくなく、私達になじみのある現代のキャラクターにも見出すことできます。森に住む美しい種族となったエルフ、世界的な人気を誇るRPGのキャラクターになったゴーレムなど、時代の流れとともにキャラクター自身も変容し、新しい物語とともに生き続けているんですね!おもしろい!
なぜ昨年爆発的なヒットとなった『鬼滅の刃』があれほど世界中で人気を博したのでしょう?
それは日本の伝統的な鬼のイメージが、西洋のドラキュラやゾンビ、さらにはそれを着想源とした『ジョジョの奇妙な冒険』に登場するような「吸血鬼」を経て、『鬼滅の刃』の鬼へと変容を遂げてきたことに理由があるようです。
日本的な「鬼」のイメージが、異なる宗教や文化背景の人達にとっても親しみのある普遍的なキャラクターへと変化したことで世界中の人々に共感を与えているんですね。
横田先生、日本のサブカルチャー論から民話研究にまたがる興味深い講座をどうもありがとうございました。
次の機会にはご専門の『グリム童話』の研究についてもっとお聞きしたいと思います。